· 

第211回国会 総務委員会 第7号


○浮島委員長 次に、輿水恵一君。

 

○輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 

 本日は質問の機会をいただきましたことに、心より感謝を申し上げます。

 

 それでは、早速でございますが、日本放送協会、NHKの令和五年度収支予算並びに事業計画及び資金計画につきまして質問をさせていただきます。

 

 先ほど稲葉会長より、「スリムで強靱な新しいNHKを目指した構造改革を更に強化します。」と力強い御決意を伺いました。このNHKの収入は、受信料の値下げや奨学金受給学生への免除に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で減収が続いています。このような状況の中で、構造改革を断行して約五百五十億円の支出削減を行いながら受信料の値下げに踏み込むNHKの姿勢を高く評価をさせていただきます。

 

 ここで、令和五年度の受信料の支払い率は八〇%前後になると見込んでいると伺っておりますが、この受信料につきましては、適正かつ公平な徴収に向けて、より効果的かつ効率的な取組への対策も必要であると考えます。

 

 そのためには、未契約者及び未支払い者について、その原因や理由について丁寧な調査と分析が大切であると思います。

 

 そこで、NHKでは、未契約者及び未支払い者についてどのような分析の下、どのような対策が打たれたのか、また、今後はどのような取組を進めようとしているのか、お聞かせください。

 

○稲葉参考人 現在、NHKでは、戸別の御家庭への訪問中心の営業活動から、訪問だけに頼らない営業活動への転換を進めているところでございます。

 

 未契約世帯の多い大都市圏では、NHKのコンテンツへの接触とか受信料制度の理解が十分には進んでいないということや、世帯の移動が頻繁であるということが課題になっているというふうに認識しております。

 

 このため、新生活を始められる方々や若年層向けには、デジタル広告などを通じてNHKの公共的価値や受信料制度の御案内を行うとともに、特別あて所配達郵便を送るなどして契約手続をお願いしているということでございます。

 

 また、受信料のお支払いが滞っている方に向けては、支払い用紙を繰り返しお送りするとともに、受信料に関するウェブページに御案内する、お客様それぞれの状況に合ったアプローチに取り組んでございます。

 

 今後とも、NHKの公共的価値を理解していただくというのが大事なことでございますので、この辺を納得していただき、受信料をお支払いいただけるよう取り組んでいきたいというふうに思っております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。

 

 お一人お一人の事情とか状況を丁寧に確認していただきながら、適切な対応をお願いできればと思います。

 

 続きまして、令和五年度の放送センターの建て替えや放送設備の整備などの建設予算、これが約九百六億円と伺っております。ここで、NHKでは、受信料の価値を最大化するためのマネジメント施策の一つとして、効率的な業務体制の確立と保有設備の削減を掲げる中で、中期経営計画で示された新放送センターの建設計画の抜本的な見直しを進めようとしています。具体的には、設備のシンプル化、集約化、クラウド化などで徹底的な建設経費の圧縮に取り組むとしておりますが、この新センター建て替え計画の抜本的な見直しの一環として、放送センター建て替えに伴いドラマなどの大型スタジオがなくなる間の代替機能を確保することを目的として二〇二〇年六月に計画決定した川口の施設についても、計画を変更すると聞いています。

 

 そこで、具体的に、どのような考えの下でどのような変更がなされるのか、お聞かせ願えますでしょうか。

 

○板野参考人 お答えいたします。

 

 二〇二〇年、令和二年に経営決定いたしました川口施設、これは仮称でございますけれども、この基本計画案では、埼玉県川口市に四つのスタジオなどを備えた施設を整備しまして、放送センター建て替えでドラマ制作などの大型スタジオがなくなる間の代替施設、代替機能を確保することを主な目的としてまいりました。

 

 今回、放送センター建て替え計画を抜本的に見直すに当たりまして、川口施設に本部で行うドラマ制作を集約をいたしまして効率のよい姿に改めるべきと考えまして、二〇二二年に、当初の基本計画の見直しを経営決定いたしました次第でございます。

 

 具体的には、従来の計画から設備を拡充し、新たにスタジオを二つ追加整備することといたしました。これによりまして、新しい放送センターにはドラマ用のスタジオは整備をせず、渋谷と川口で機能分担を明確にしてまいりたいというふうに思っております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 仮設ではなくて、しっかりと恒久的なそういったスタジオが川口の方でということでお聞きをいたしました。

 

 この川口の施設の建設予定地であるSKIPシティは、二〇〇三年に埼玉県川口市にオープンしたさいたま新産業拠点で、SKIPというのは、サイタマ・カワグチ・インテリジェント・パークの略でございまして、ここは、映像制作の環境を整え、さらに、映像関連産業の集積地として計画をされているところでございます。

 

 このSKIPシティには、映像の歴史や仕組み、映画の作り方等を学べる体験型イベントや、映像について新しい発見ができる企画展やワークショップを開催をしている映像ミュージアムや、埼玉県が収集し保存している画像や写真、また、NHKの懐かしい番組など、それらを無料で楽しめる埼玉県の彩の国ビジュアルプラザとNHKアーカイブスがあります。

 

 そこで、今回のNHKの川口の施設へのドラマ撮影拠点の移転整備を契機に、NHKが開発を進めている最先端の4Kや8K画像の制作や配信の技術や、AR、VRを始め、視聴環境に応じた多様なコンテンツの表現を可能とする映像、音声世界を実体験できる空間など、SKIPシティの映像ミュージアムやNHKアーカイブスなどと連携し、NHKの最先端の映像技術を体験できる環境などを整備することも大変有意義ではないかと考えますが、お考えをお聞かせ願えますでしょうか。

 

○板野参考人 お答えいたします。

 

 川口施設は、ドラマスタジオなどを集めた制作拠点とする予定でございます。スタジオ内に設置した高精細なLEDパネルのCG映像を背景にして出演者が演技をする、バーチャルとリアルを融合した新たな映像表現など、様々な新しい手法を取り入れていきたいと考えている次第でございます。

 

 こうしたスタジオ整備と併せまして、NHKのコンテンツに親しんでいただいたり、理解を深めていただいたりするための施策につきましても、SKIPシティにあるNHKアーカイブスなどの施設と連携して、取組を含めて検討していきたいというふうに考えております。

 

○輿水委員 是非よろしくお願いを申し上げます。

 

 それでは、続きまして、NHKの放送映像技術等の開発に要する令和五年度の予算は約六十億と伺っております。ここで、民間企業では、研究開発の成果は新たな収益を生み出す大事な経営資源となりますが、NHKの放送技術研究所、そこが研究の中心なんですけれども、ここは、一九三〇年の六月に開所し、テレビを中心に放送技術の研究を進めてきたところであると伺っております。このNHK放送技術研究所の研究成果について、放送分野だけではなく幅広い分野への活用を進める中で、新たなサービスや製品の創出に貢献することも必要であると考えます。

 

 このNHKの放送技術研究所、まさに、一九六〇年のカラーテレビ放送、さらに、一九八七年の衛星放送、そして、二〇〇〇年のハイビジョンBSデジタル放送、さらに、二〇〇三年の地上デジタル放送などの実用化に貢献してきました。

 

 最近では、ハイビジョンの十六倍の画素数を持つ8K、スーパーハイビジョンの研究開発を進め、二〇一八年に新4K、8K衛星放送としてサービスを開始するなど、NHK放送技術研究所は常に新しい放送サービスの実用化を先導してきたと思っております。

 

 直近では、今まで有線カメラでしかできなかった高精細画像に対して、ミリ波帯を活用した無線伝送装置と、映像の超高速の符号化技術を組み合わせた4K画像を高画質、低遅延で伝送するワイヤレスカメラシステムを開発をし、紅白歌合戦で臨場感あふれる高画質放送を実現したと伺っております。

 

 このように、九十三年前から放送技術の研究開発に取り組んできたNHKの技術は、我が国の貴重な技術資産であると考えます。そして、この開発された技術を、放送という分野だけではなく医療、教育、あるいは、文化、芸術の分野にも積極的に活用を進め、新たなサービスや製品の創出に貢献することは大変に有意義である。

 

 そこで、例えば、ハイビジョンの十六倍の画素数を持つ8Kスーパーハイビジョン技術の、拡大鏡等が必要な手術や遠隔での病理診断など、医療現場での活用、また、先ほどの4Kワイヤレスカメラシステムの舞台装置としての活用など、NHK放送技術研究所で開発された技術を生かしての新たなサービスや製品の創出に取り組む、その考えについてお聞かせください。

 

 あわせて、こういったものを世の中にしっかりつなげていくための、そういった商品やサービスを企画するための組織体制の強化も私は必要と考えますが、お聞かせ願えますでしょうか。

 

○児玉参考人 お答えいたします。

 

 放送技術研究所で開発した8K技術は、究極の二次元映像を表現する高精細、広色域の特徴を利用して、放送以外の分野でも活用されることが期待されております。

 

 これまでに、関連団体などとも連携をして、遠隔手術支援システムなどの医療分野での開発や、重要文化財の映像保存などで8K技術の活用が進められております。

 

 NHKが研究開発した技術が新たなサービスや製品の創出に寄与していくためには、メーカーや様々な関連業界と連携して、標準規格の策定や技術協力の取組も重要であると考えております。

 

 今後も、メディア産業、医療、芸術、教育など、幅広い分野に貢献していけるよう取り組んでまいりたいと考えております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。是非よろしくお願いをいたします。

 

 続きまして、NHKでは、いつでも、どこでも、誰もが必要とするサービスを届けるために、ユニバーサルサービスを提供する研究開発にも取り組んでいると伺っております。視覚、聴覚障害者や、高齢者、外国人を含むあらゆる人々に対して、字幕や解説、手話などの情報でコンテンツを補完する情報発信技術の研究開発は大変に重要であります。

 

 そこで、今日までにどのような技術を開発し、実用化してきたのか、また、今後はどのような技術の開発に取り組もうとしているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

 

○児玉参考人 お答えいたします。

 

 放送技術研究所では、人間の視覚や聴覚に関する長年にわたる研究成果と最新の技術を組み合わせて、高齢者や障害者など、誰もが身近に放送・サービスを楽しめるよう、ユニバーサルサービスの研究開発を進めております。

 

 これまでに、音声認識による字幕制作、高齢者や障害のある方が音声を聞きやすくなる話速変換技術などを実用してまいりました。また、二〇二一年の東京オリンピック・パラリンピックでは、手話CGによる実況サービスをインターネット配信で実施しました。

 

 今後は、更なるユニバーサルサービスの充実に向けて、ニュース速報など、定型化されていない文章を手話CGで伝えるための技術や、放送の内容を合成音声で補足解説する自動解説音声技術などの研究開発に取り組んでまいりたいと考えております。

 

○輿水委員 是非よろしくお願いを申し上げます。

 

 最後に伺います。

 

 NHKでは、ユーザーの生活や環境の多様性、災害時などの緊急性に対応して、必要なコンテンツを適切なタイミングで届けるために、放送に加えて、インターネット、ウェブなどのプラットフォームを活用した研究開発も進めていると伺っております。

 

 具体的には、放送、通信の伝送路や視聴デバイスの違いを意識せず、簡単にコンテンツを享受できる配信、掲示技術、また、様々な機能を持つIoT機器を活用して最適なコンテンツを提供する技術などの研究開発を進めております。

 

 そこで、具体的に、首都直下型地震や南海トラフ地震等の大規模災害が発生した際に、どのような視聴デバイスで、どのような技術を生かして、どのようなタイミングで、どのような情報伝達を実現しようとしているのか、最後にお聞かせ願えますでしょうか。

 

○稲葉参考人 御指摘のように、大規模災害が発生した場合には、国民の生命や財産を守るために、テレビやラジオだけではなくて、様々なデバイスに確かな情報を伝達するということが大変大事だというふうに思っております。

 

 放送技術研究所では、スマートフォンに加え、インターネットに接続された例えば生活家電などにも、映像と音声、テキストなどが緊急情報として届けられるように、研究開発を進めております。

 

 それから、この面では大変大事な問題、課題なんですけれども、一般的に、インターネットを使った配信は放送よりもデータが届くのが遅れるというふうにされております。この面で、より低遅延あるいは遅延をなくすための情報配信技術の研究というのは非常に大事な分野だと思って、推進してございます。

 

 今後も、こういった研究開発を通じて、視聴者の皆様の安全、安心に貢献していきたいと考えております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。

 

 もう本当にいつ来るか分からない、そういった震災にもしっかり備えていただき、国民の命を守っていただく、そんな取組、是非実現をしていただけると思います。

 

 以上で質問を終わります。大変にありがとうございました。