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第208回国会 予算委員会 第10号


○根本委員長 これにて浦野君の質疑は終了いたしました。

 

 次に、輿水恵一君。

 

○輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 

 本日は、四人の先生方から本当に貴重な、大事なお話をいただきまして、本当にありがとうございます。

 

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 

 初めに、宮本先生の方に御質問をさせていただきます。

 

 先生の方からは、仕事と家庭の両方から排除される女性の増加、あるいは親に頼ることのできない若者の存在、こういったお話をいただきました。まさに社会的孤立が非常に問題になっている、そういった視点かと思います。

 

 実は、私たち公明党は、これまでも社会的孤立の問題を一生懸命取り組んでまいりました。そして、コロナ禍において更に深刻化している実態を把握し、迅速に国、地方で対策を講じなければいけない、そういった視点の下、昨年の二月十六日、公明党の中に、竹内政調会長を全体の本部長、そして山本香苗参議院議員がその本部長という形で、公明党の社会的孤立防止対策本部を立ち上げました。

 

 そして、本部設置後からすぐに、全国の地方議員とともに、有識者や民間支援団体等から計九回のヒアリングをし、さらに、三月十四日から四月末までは、全国各地で社会的孤立の実態や孤立防止のための方策についてNPOやあるいは様々な団体からヒアリング等調査をさせていただきました。

 

 その結果の一つの結論が、最終的には社会的な孤立は個人の問題ではなくてまさに社会の問題、個人ではどうしようもない、そういった状況になっているんだ、そういった結論を得たわけですけれども、この点について先生の見解をお聞かせ願えますでしょうか。

 

○宮本参考人 ありがとうございます。

 

 まさにおっしゃるとおりだと思います。特に、社会的孤立が顕著になったこの二、三十年間を考えてみますと、とりわけ孤立に至る背景というものは非常に明快であるように思います。

 

 最初のお話をさせていただいたところでもありますけれども、一つは仕事。そして、仕事とお金は表裏一体ですので、お金の問題。それから、病気ですね。病気というのも非常に重要な要因になっていまして、病気をすれば仕事はなくなり、お金がなくなるというようなことですけれども、特に病気に関しては、長期にわたる病、いろいろな病がありますけれども、そのことによって社会から孤立していくというような状況にあります。

 

 かつてであれば親族の網の目があったわけですけれども、今、親兄弟といっても兄弟の数も少なくなり、おじ、おば、おい、めいという斜め関係も非常に少なくなっている中で、仕事やお金や病気その他のことでつまずくと頼れる人がたちまちいなくなるという状況にあると思います。

 

 そういう意味でいうと、孤立する人を自己責任だと言わずに、これは社会の環境の結果である、その状態になるのはその人だけでなく、いつ自分もそうなるか分からないということを、どれだけみんなが共有できるかということにあると思います。その辺りのところの認識が深まっていけばコミュニティー形成というのはできると思います。実態としては、このコロナの中でかなりそういう共感というものが生まれたという面もあると思いますけれども、まだまだ他人の困り事はその家族なり親族の問題だという傾向が強いというところ、ここを何とかしなければならないだろうという感じがいたします。

 

 どうもありがとうございました。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 そういった孤立の問題というのは他人事ではなくて、いつ自分もそういった状況になるか分からない、そういった思いを共有をしていく、そういったことの大切さを本当に感じております。そして、社会的孤立は、様々なこのような問題を生み出すだけではなく、先ほどの健康の悪化、経済の不安定化、さらに、社会保障給付費の増大等、社会に大きな影響を及ぼすことが懸念されているわけでございますけれども。

 

 私たち公明党は、孤立、あるいは孤独・孤立対策のための十か年国家戦略、こういったものをしっかり策定し、複数年にわたって事業を継続的に実施する体制を構築すること、また、官民連絡協議会で定期的に施策の進捗状況等をフォローするとともに、支援現場における課題を吸い上げ、施策にタイムリーに反映していく新たな取組を構築するべきだというふうに提言させていただいているわけですけれども、この点についての御見解をお聞かせ願えますでしょうか。

 

○宮本参考人 済みません、今、さっきのことを考えていて、申し訳ございません、後に回していただければ。

 

○輿水委員 じゃ、済みません、今の御質問は後ほどまた聞かせていただくと同時に、今、宮本先生が大事なお話で、その困難というのを共有していくということで、今度は井手先生にお伺いします。

 

 井手先生の一つの書物というか、読ませていただきましたが、弱者を助けようというふうに声をかけるとほかの人たちも、大勢の方が、自分もこんなにひどいんだ、今はそういう状況だ、そういった中で優しさや寛容さが社会に失われているんだ、そういうお話を先生はされたことがあると思いますが、このお話に大変私もショックを受けました。全体的にそういうふうになっている。まさに先ほど先生がおっしゃられたように、低成長の時代は、成長による富の分配、これではなく、先生は、成長するためのサービスの分配、こういったことを御示唆されたんだと思います。

 

 まさに、その中で先生が今述べられたベーシックインカムではなくてベーシックサービス、こういうことでございますが、私も非常にこのお話は興味を持って更に勉強を深めたいと思っているところでございますが、先生はこのベーシックサービスということをいろいろなところで多分御講演されていると思うんですけれども、ベーシックサービスに対して反対している方もいらっしゃると思うんですけれども、どのような意見をお持ちの方がベーシックサービスに対して反対というか、後ろ向きな意見を持っているのかについてお聞かせ願えますでしょうか。

 

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

 

○井手参考人 ありがとうございます。

 

 ベーシックサービスの一番重要な肝はと申しますと、所得制限をつけずに全ての人たちにサービスを提供していこうとする、まさにこの部分でございます。

 

 これは、今までの施策を見ましても、例えば特別定額給付金もそうですし、消費税の軽減税率もそうですが、全ての人たちが受益者になるような仕組みをつくっていくと、国民のかなりの人々が支持するんですよね。ですから、ベーシックサービスの考え方そのものに反対をする意見というのを直接聞いたことは余りございません。反対に、ベーシックインカムを考えておられるような方は、いや、やはりお金を自由に使えた方がいいからそちらがいいよとおっしゃる方もおられますし。

 

 ただ、私は、限られた予算の中でどのように配っていくかということを考えれば、ベーシックサービスの方がはるかに安価に効率的にやっていけると。

 

 私の場合は、税をセットで、財源論から逃げてはいけないということを正面から申し上げますものですから、むしろ、ベーシックサービスへの反対ではなくて、税あるいは消費税ということを言ったときの反発が非常に強いというのが正直な感想でございます。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 まさに税という部分になったときに相当な圧力や抵抗もあるのかな、そういうふうに感じるんですけれども。

 

 私がまた先生のお話の中で一つ感動したのは、ベーシックサービスを実現するための例えば増税が必要になったとしても、それは増税ではなくて、先ほど宮本先生のお話もあったんですけれども、いつ自分がそういった状態になるか分からない、病気になったときに社会的な孤立状態になるかもしれない、そういったときのためにベーシックサービスというものがあれば、そんなときに保険として、自分が社会に守られて安心して暮らし続けられるという意味では、保険料、そういった考え方の中で世間の皆様の理解を深めていく、そんな考え方も述べられていたんですけれども、その点についてもうちょっと詳しく教えていただけますでしょうか。

 

○井手参考人 ありがとうございます。

 

 私自身は保険料というふうに申したことはございませんで、基本的には税というふうに申し上げております。

 

 税というのはいわば暮らしの会費のようなものでございまして、例えば消費税に固執するつもりはございません。これは、所得税、法人税、様々な税の組合せがあろうかと思いますが、仮に消費税だとすれば、毎日スーパーに行って買物をするときに暮らしの会費を上乗せして払っているわけですね。その代わり、自分が病気をしても、子供を何人産んでも、あるいは失業をしても、長生きをしても、安心して生きていける社会ができ上がる。もちろん、低所得層に関しましては消費税の負担が大きいということはあろうかと思います。これは必ず出てくる批判でございますが。

 

 ですけれども、私の場合は、今日申し上げているように、住宅給付を創設してこれをセットとして議論しておりますので、現実には、全体の所得階層の中の下、二割の人たちはむしろ消費税の負担があってもなお得をするような制度設計にしております。

 

 ですので、あくまでも暮らしの会費、いわば貯蓄がゼロでも不安がゼロの社会をつくっていく、そういうふうに考えるべきではないかと思っております。

 

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 確かに保険料と言ってしまうと、保険的な考え方、そういう内容だったと思います、済みません。

 

 そういった中で、先ほどの宮本先生の質問に戻るんですけれども、こういったベーシックサービス、そういう論点も含めた上で、孤独・孤立対策のための十か年国家戦略、まさに国家戦略としてこういった孤立とか孤独をどう解決していくかが日本の新しい未来を占うのではないか、このように感じているわけでございまして、宮本先生がおっしゃるように、地域の現場でそういった、支え合うというか、互いに見守り合う社会、そういった中での官民の連絡協議会という形でしっかりと進めていくことも必要なのかなと思うんですけれども、その点についてお聞かせ願えますでしょうか。

 

○宮本参考人 どうも、先ほどは失礼しました。

 

 地域の中で協議会とおっしゃっておられます。実は、協議会という名前のものは今非常にたくさんあって、あらゆる事業が連携、連帯、そして協議会づくりということになっているんですけれども、協議会が具体的に機能した例というのが極めて少ない状態にあるわけなんですね。関係者が名前の違う協議会に出て、毎回同じような人が出ているというようなことが言われているわけでございます。その協議会を実質的に機能させることが課題だというふうに思います。

 

 どのようにして実質的に機能させるかということですけれども、一つは、例えば支援が早急に必要だというような人がいたというときに協議会が機能できるかどうかですけれども、現状では直ちに具体的に機能できない協議会が非常に多いわけですけれども、関係の担当者が、違う部局あるいは分野の人が集まって具体的にAさんの議論をするというようなことができるようになれば、大分話は違ってくると思います。

 

 そのためには、それに必要な予算を立てること、それから、連携して働くような意識と、訓練を受けた人材をつくっていくこと、これは、行政はその役割を果たすとても重要なキーパーソンになると思うんですけれども、行政がまさに、縦割りの行政ではなくて、横に連携、取っ払った形で支援が必要な人たちに支援できるためのコーディネーターになること、そして、その地域の中にどういう必要な支援があるかをしっかり頭に入れて、組み合わせながら具体的に働いていただけるように、そういうような環境整備が必要ではないかというふうに思っております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 本当に、協議会とか一口で言っても、やはりそこをコーディネートする人材の必要性、また、そういった全体観に立った形で孤立とか孤独の問題をしっかり解決に導ける、そういったコーディネーターというか、そういった人材育成も含めて、しっかりとした対策が打てるように頑張っていきたいと感じました。ありがとうございます。

 

 続きまして、権丈先生にお伺い申し上げます。

 

 労働力希少社会が求める労働市場の在り方ということでお話をいただきました。まさに私も同感でございます。

 

 そんな中、女性あるいは高齢者の労働力、このことに言及されているわけでございますが、まさに自分の生活や体力に合わせた働き方ができる多様な労働時間の選択をした労働者、こういった労働者がまさに非正規ではなく正規になるための壁というのはどんなところにあるのかにつきまして教えていただけますでしょうか。

 

○権丈参考人 ありがとうございます。

 

 非正規から正規の壁ということでございますけれども、一度非正規になるとなかなか正規になりにくい、企業側が雇いにくいといったこと、先ほどの宮本先生のお話などでもあったかと思います。

 

 私が特に考えておりますのは、非正規の多くが女性であるというところを考えますと、女性たちの多くが出産、育児などを契機に辞めてしまいます。その次にある仕事というのは、非正規、パートの仕事ということが主流です。

 

 そして、私が強調したいところは、女性が非正規でパートでも不思議はないというふうな考え方といいますか、日本では割とそういったところが一般的にきていたというところに一つあるのではないかと思います。

 

 正社員の方の働き方がより柔軟であれば、女性も辞めずに済みます。特に、育児休業制度の改正によりまして、育児短時間勤務が今利用可能になっております。この制度の利用者は非常に多くなりまして、女性の継続就業が大きく増えました。そうはいっても辞められる方も多いんですけれども、そうした労働時間の柔軟性、育児休業の制度のバリエーションといったところは非常に有効かと思います。

 

 また、非正規労働として新卒で入ってしまうと、なかなか職業経験の機会を得ることができずに、そうすると、正規の雇用が難しいということもあります。有期雇用から無期雇用への転換という仕組みもありますので、是非、広く利用していただけるようなそういった仕組み、そして職業訓練も充実していただきたいというふうに考えております。

 

 ありがとうございます。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。

 

 まさに、そういった新しい女性のキャリアパスというか、そういったものがしっかりこの日本でも築かれるような、そういった社会にできればと思います。ありがとうございます。

 

 松井先生、私は、松井先生のオールパブリックで公共性を考え実行する時代、まさに、何でもが公共ではなくて、民間と公共が協力をしながら多様な行政サービスというか公共サービスを実現していく、そういった時代になった、このように思っているわけでございますが、大事なことは、新しい公共の質と安全性をどう評価して確保するのか、こんなことが必要なのかなということでございますが、今日は時間が来てしまいまして、また今度の議論にさせていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 

 大変にありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 

○根本委員長 これにて輿水君の質疑は終了いたしました。