第193回 科学技術・イノベーション推進特別委員会 3号

○松野委員長 次に、輿水恵一君。 

 

○輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。 

 

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。時間も限られておりますので、早速ですが質問に入らせていただきます。 

 

 初めに、ゲノムデータを活用したがん治療のイノベーションについてお伺いを申し上げます。 

 

 先日、私は、国立がん研究センターを訪問し、臨床がんゲノム診断の現場を見させていただきました。ここでは、がん細胞と正常な細胞のゲノムデータを比較し、どの遺伝子の変異で発現したがん細胞かを特定する遺伝子プロファイリングにより、治療法の選択や治療の効果についての研究が進められておりました。このようなゲノム診断による遺伝子プロファイリングにより、患者の個々人に合った効果的な治療を進めることができるようになります。 

 

 ここで、一人のヒトゲノムDNA配列は約三十億文字、その膨大なゲノム情報を読み取る作業のことをシーケンス、読み取り装置をシーケンサーというそうですけれども、現在、高速に大量のシーケンスデータは出てくるようになりました。しかし一方で、この解析がボトルネックになっている状況もあるというふうに伺っております。 

 

 日本人の死因別死亡率のトップはがんであるんですけれども、そのがんの効果的な治療を実現するための鍵の一つが、このゲノム情報に基づいた個別化医療の確立にあると思います。そのためには、オール・ジャパンの体制で、膨大なゲノムデータを蓄積し、解析するための情報基盤の整備やゲノム解析研究者の育成など、国家的なプロジェクトとして取り組むべき必要があると考えます。 

 

 そこで伺いますけれども、このゲノムデータ利活用による我が国のがん治療のイノベーションの推進への取り組み状況につきまして、お聞かせ願えますでしょうか。 

 

○宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。 

 

 先生から御指摘もありましたが、近年、個人のゲノム解析技術やその結果を解釈するための情報通信技術が飛躍的に向上しておりまして、一人一人の患者の特性に即した、従来よりも効果が高く、副作用の少ないがん治療を届けることが可能となりつつあります。全国の患者さんにがんゲノム医療を届けるためには、患者個人のがんの原因となったゲノム変異や治療効果等に関する情報等を集約しまして、人工知能等を用いて解析するとともに、治療に当たる医療関係者等を支援する拠点の整備が必要であると考えております。 

 

 昨年末には、総理から厚生労働大臣に対しまして、がんに立ち向かう国民の皆様の命を守るために、がんゲノム医療の計画的な推進を行うようメッセージがあったところでもございまして、厚生労働省といたしましては、国内の医療従事者や研究者のお力を結集して最新のがんゲノム医療を国民に提供する仕組みを構築するために必要な機能や役割を検討することを目的に、がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会というのを開催しておりまして、本日は三回目の御議論をいただく予定としております。 

 

 全国の皆様の英知を結集しながら、一刻も早く国民の皆様にがんゲノム医療を届けられるように取り組んでまいりたいと考えているところでございます。 

 

○輿水委員 もうぜひ総力戦でしっかりと取り組んでいただければと思います。 

 

 ここで、ゲノム医療の実現のためにもう一つ重要なことは、遺伝子プロファイリングにより、どの遺伝子の変異により発現したがんかを特定した上で、その異常な遺伝子の発現を阻害したり抑制したりする薬剤の開発、これが大事であると思います。そのためには、ゲノム解析から創薬までの一貫した強力な研究体制の構築が必要と考えるわけでございますけれども、現状と今後についてお聞かせ願えますでしょうか。 

 

○小川政府参考人 お答え申し上げます。 

 

 先生御指摘のとおり、ゲノム解析で得られた遺伝子情報を利用した予防、診断に加え、新たな薬剤の開発等の利用に向けた利活用は極めて重要な課題であると認識しております。 

 

 そのため、平成二十七年四月に日本医療研究開発機構、AMEDを設立いたしまして、関係省庁でばらばらに支援していた医療分野の研究開発を集約し、創薬研究など、分野横断的な支援を一体的に実施できる体制を構築した上で、ゲノム研究につきましては、研究者が利用できるバイオバンクの再構築、分野ごとに複数の研究拠点が持つゲノム情報のデータベース整備等につきまして、AMEDが司令塔となって進めているところでございます。 

 

 さらに、ゲノム情報を用いた医療等の実用化につきましては、関係府省、関係機関が連携して推進するため、健康・医療戦略推進本部のもとにゲノム医療実現推進協議会を設け、御指摘のがん領域における創薬等のための研究体制を含め、具体的な検討を進めておるところでございます。 

 

 政府といたしましては、引き続き、ゲノム医療における一貫した研究体制の整備に取り組んでまいりたいと考えております。 

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。 

 

 まさにAMEDはそのためにある、そういった機能を生かしながら、そういった創薬、一貫した取り組みを進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。 

 

 そして、ここで今も、AIの活用とかICTの技術活用がこのゲノム医療の現場でも進んでいると思うんですけれども、次の質問といたしまして、ICTの基礎知識を備えた幅広い分野における人材の育成について確認をさせていただきたいと思います。 

 

 今日、ICTの急激な発展によりあらゆる分野におけるICTの活用が進んでいるわけでございます。特に、あらゆる物や事がインターネットにつながるIoTの進展によりインターネット上にも膨大なデータが蓄積され、それをAIにより解析した結果を組み合わせて新しいサービスや商品等も生み出されるわけでございますが、このICTの進化というのは科学技術イノベーションの世界においてもまさに大きな役割を担うんだと思います。健康や医療の分野の研究開発においても、膨大なデータを活用し、新しい知見を生み出す、ゲノムの医療の実現においても、まさにこのすぐれた、ゲノム解析に特化したAIといった活用も期待をされるわけでございます。 

 

 このAI、またIoT、ICTの社会のあらゆる分野のAIの実装のためには、特定の分野や作業者に特化して、機械学習、深層学習により強化された、そういったAIをいかに高いレベルで完成していくか、そういった中であらゆる分野での新しいイノベーションも生み出されやすくなると思うわけです。 

 

 そういった中で、このICTやAIは、先ほどのゲノム医療だけではなく、今後幅広い、医療、あるいは農業や物流、移動、エネルギーなどの分野の現場で活用する必要があると思うわけですけれども、そのあらゆる分野において不可欠な道具とも言えるICT、AI等を活用して、日本から新しいサービス、商品を生み出すための人材の育成、こういった教育環境の整備というのは非常に重要であると考えるわけでございますけれども、この点についての取り組み状況をお聞かせ願えますでしょうか。 

 

○板倉政府参考人 お答えいたします。 

 

 世界的に情報科学技術、とりわけ人工知能技術が急速に進展する中、我が国といたしましても、AIの普及に伴う経済、産業、さらには社会のあらゆる領域への影響について対応を検討していくことは極めて重要であるというふうに考えてございます。 

 

 政府といたしましては、御指摘いただいた科学技術イノベーション総合戦略二〇一六のほか、未来投資会議のもと成長戦略の一環として設置されました人工知能技術戦略会議におきましても、AI人材育成に向けた府省横断的な取り組みについて取りまとめたところでございます。 

 

 文部科学省におきましては、こうした政府全体の方針に沿いまして、人工知能の革新的な基盤技術の研究開発と人材育成を一体的に実施する拠点の形成、また博士号取得者などを対象に企業、大学などのコンソーシアムを通じたデータ人材育成の研修プログラムの実施、また学部学生に対する産学連携によります実践的な教育の推進、それから、大学におきまして、文系、理系の枠も超えまして、全学的な数理及びデータサイエンス教育を実施する拠点の整備など、AI、ビッグデータ、IoT、セキュリティー及びその基盤となりますデータサイエンス人材の育成、確保に資する施策を体系的に実施しているところでございます。 

 

 引き続き、文部科学省といたしましては、ICT、AI人材の育成に向けて幅広い取り組みを積極的に進めさせていただきたいと考えております。 

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。 

 

 まさにそういったトップレベルのAIの人材育成と同時に、また若い世代からそういったものに触れる教育も含めて進めていただければと思います。よく米国等では、AIの、新しい技術を開発する世代というのは二十代だと言われているわけで、その二十代のときに最高に力が発揮できるような、そういった持っていき方もぜひとも一緒に検討して進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。 

 

 こういった新しい科学技術イノベーション、まさに支える財源と人材というのが大変重要になるわけでございますが、最後の質問として、技術立国を支える研究開発と商品開発の好循環の構築という観点で質問をさせていただきます。 

 

 少子高齢化が進行する日本の繁栄と発展の道を開くためには、先ほどのゲノム医療の現場を初めさまざまな分野で、将来にわたり科学技術イノベーションをしっかり推進しながら、科学技術立国としてのそういった国づくりが大変に重要であるというふうに考えるわけでございますけれども、そのためには、しっかりとした研究者を育てていく、また、そのための研究の資金をしっかり確保していく、こういった取り組みが重要であると考えるわけでございます。 

 

 ここで、研究開発投資においては、例えば、応用段階に入れそうだ、入れるのではないか、そういった技術につきましては、国と民間企業と、また金融機関が協力をして、充実した資金のもとで、より短期間での技術の実用化を進めて、いち早く高付加価値の製品、商品、サービスを世の中に出していく。そういったことの中で、そういった技術が早く収益を生み出せる、そういった環境をつくる、そしてその収益を次の投資へしっかりと回していけるような好循環をつくるとともに、今後進展が期待される基礎的な研究についても、将来への明確な応用ビジョンを共有しながら、しっかりとそこにも投資をしていくような、基礎研究から応用までの安定的な十分な資金供給と、また人材の育成、そういった好循環をしっかりと構築する必要がある。 

 

 まず、このことが今後の日本にとって大事な問題だと思うわけでございますけれども、鶴保大臣の方に、この辺の取り組みについて、考え方についてお伺いしたいと思います。 

 

○鶴保国務大臣 まさに問題意識は同じでございまして、我々の今科学技術を取り巻く環境の中で、真水で十分あり余るぐらいの予算を編成できればそれに申し分はないわけでありますが、官民があわせて研究開発投資に向いて、御指摘のような科学技術の研究開発の好循環を生み出す仕組みをつくっていかなければならない。 

 

 その意味においては、先ほどの応用に際する、実装化の前夜になっているようなものに対して、より実装化を進めていくような仕組みができないか、そして、それがまた再投資に向いていくような仕組みができないかということから、少し説明の順番は違うんですけれども、私どもとしては、まず、ニーズとシーズをくっつけるような、先ほどもちょっと御説明を申し上げましたが、科学技術イノベーション・マッチング・フォーラム、これは仮称で、サイエンスIMFと称しておりますけれども、そういうフォーラムを立ち上げて、マッチングの場をつくって、そこから実装化をし、そしてそこで新たな技術を社会実装化して産業を生んで、そこからまた研究機関に再投資をしてもらえるような仕組みをつくろうじゃないかというような話でございます。 

 

 先月二十四日も、こうした私どものプランをTSURUHOプランと名前を名づけて発表させていただきましたけれども、具体的には、先ほどお話をちょっとしたことと重複いたしますけれども、こうした新たな民間投資が今までは少しできにくい部分もあったんですね。 

 

 例えば、国立大学や研究開発法人に対して、評価性資産というようなもの、土地だとか株式だとか、こういうものをもって、これを投資するということならば、その評価性資産の現価を、現在価値をしっかりと出してからでないと寄附ができないような仕組みになっておりましたから、こうしたことも、寄附する際の譲渡所得を非課税とする等々の要件緩和をこれから進めていかなければならない。 

 

 また、こうしたことによって、ベンチャーが生まれ得る素地をつくっていく。私どもの新しいこういう技術を使って資金提供をしていただきたいが、今はお金がないけれども、私たちの株を買っていただきたいというようなこともこれからしていただけるようにもなっていくであろうというようなこと。あるいはベンチャーの育成のために、公共調達では、ある程度、こうした中小のベンチャー企業の育成に向けていくために、公共調達の一定割合を中小、ベンチャーに振り向けていくというようなことができないか等々を柱とする計画を立てさせていただきました。 

 

 これらを通じて、これだけで全て好循環が発出していくというわけではないかもしれませんが、お金、知識、そして人材、こうしたものの三つがどこからか動いていくように、まずはやれることからやっていこうじゃないかということで計画を立てさせていただいておるところであります。 

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。 

 

 まさにあらゆる企業と大学のコラボレーションで、今までの研究開発費が、いろいろな情報からすると、十倍、二十倍になって、そして開発が進められるようになったケースもある。そういった中で、今度はそれをどう商品化していく、また、したときにその辺の権利関係をどういうふうに整理していくか、そういったこともトータルで見ていただきながら、しっかりそういったコラボレーションの中で新しい技術が生み出されやすい、また短期間で生み出せるような、そういった環境整備をまたお願いしたいと思います。 

 

 そして、結構、やはり日本の基礎研究者というのは、前回の伊佐委員の質問からも、非常に予算が少ない中で頑張っていらっしゃると。先ほどのゲノムのデータどりの研究者も、年収約三百万ぐらいで一生懸命頑張っている、そういう状況。しかし、なぜそこにあるかというのは、これに役立ちたい、また、ここの日本にいることによってこういったいいデータが集められて研究としては非常に魅力があるという、ただ単にお金だけではなくて。そういった研究環境というものをどう整えていくかという、こういった中でもいい人材を育てられる、また日本でしっかり持って新しいイノベーションにつなげられる、そういったことがあると思うわけでございます。 

 

 最後に、またもう一度、鶴保大臣にお伺いいたしますが、このような優秀な研究者、技術者を確保するためには、まさに資金面だけではなく研究に役立つデータの利用環境、そういったものの整備も必要だと考えるわけでございますけれども、この現状と今後の展望についてお聞かせ願えますでしょうか。 

 

○鶴保国務大臣 政府におきましては、国立研究開発法人や大学等を中心として、研究データを産学官で利活用できるためのデータプラットホームの整備や、学術情報の流通を円滑に進めるためのネットワークインフラの整備等の取り組みを行ってきております。 

 

 また、議員立法として提案をされました、昨年十二月に成立をしました官民データ活用推進基本法に基づきまして、本年三月三十一日、総理を議長とする官民データ活用戦略会議を立ち上げ、推進体制を整えたところであります。今後、オープンデータの推進等を強力に進めてまいりたいというふうに考えております。 

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。