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第189回国会 内閣委員会 第2号


・国民生活の安定及び向上に関する件


○井上委員長 次に、輿水恵一君。

 

○輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、感謝を申し上げます。

 

 私からは、有村大臣の所信における、共生社会に向けての障害者施策に関しまして質問をさせていただきます。

 

 障害者権利条約が、署名から約七年の歳月を経て、昨年の一月二十日に批准をされました。この条約は、障害者への特別な権利を主張するものではなく、他の市民との平等性を追求するものであり、例えば、障害のある方が公共交通を利用してどこかへ移動しようとする際、さまざまな不都合を軽減したり、解消したり、また、情報入手における問題を除去するなど、社会への参加のしやすさや生活の質の平等性を追求するものであります。まさに、共生社会の構築という課題のど真ん中にあるものだと私は考えております。

 

 我が国において、この障害者権利条約の批准に向けて、二〇一一年七月に障害者基本法の改正がなされ、二〇一二年六月には障害者総合支援法、そして一昨年の六月に障害者差別解消法が制定をされました。これらの法律に基づく取り組みが現在推進されているところではございますが、今回は、障害者権利条約の条文に照らし合わせて、現場のさまざまな課題に対するこれらの法律に基づく政府の考え、これについて確認をさせていただきたいと思います。

 

 初めに、障害者の監護のあり方でございます。

 

 障害者は、家族と同居していなければ生活が維持できない場合が多く見受けられます。私の地域にも、知的障害者のお子さんを監護しながら、毎日必死に生活を送ってこられた御家族がいらっしゃいます。そして、監護が長く続くうちに、息子さんは四十歳を超え、御両親においては高齢化による体力の低下などが見受けられ、監護の限界も見え隠れしている状況でございます。

 

 権利条約の二十三条五項には、「地域社会の中で家庭的な環境により代替的な監護を提供するようあらゆる努力を払う。」とうたわれておりますが、急激に高齢化が進む日本において、児童から成年までの障害者の監護のあり方についてどのように考えているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

 

○武川政府参考人 お答えいたします。

 

 議員御指摘のとおり、特に、両親が高齢化した際の障害者の監護のあり方につきましては、今後高齢化が進展する我が国社会において大きな課題であると認識いたしております。

 

 現在、障害者の監護につきましては、社会全体で取り組む必要があると考えておりますが、障害者基本法第二十三条におきまして、障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、障害者及びその家族その他の関係者に対する相談業務、成年後見制度の施策または制度が適切に行われるべきと規定されているところでございます。

 

 両親が高齢化した際の障害者の監護につきましても、相談支援や成年後見制度を初めとするこれらの施策が、国や地方公共団体が有機的に連携しながら実施されることが重要と考えております。

 

○輿水委員 ありがとうございます。

 

 次に、障害者の活躍の機会の創出について伺いたいと思います。

 

 少子高齢化が進む中で、全ての人々が活躍できる社会の構築は喫緊の課題であると思います。障害者権利条約の二十七条には、「労働市場において障害者の雇用機会の増大を図り、及びその昇進を促進すること」とあります。

 

 ここで、障害者の就労の現場では、実際に生活の介助を受けていた障害者が一般就労した場合に、その支援が受けられなくなることがあります。このことが障害者の就労の大きな妨げになっております。ここでの問題は、雇用施策と福祉施策が分断されている、そういった点があると思います。

 

 今後は、収入に応じた福祉サービスの利用のあり方も含め、雇用施策と福祉施策とを組み合わせて活用できる制度の検討も必要と考えますが、見解をお聞かせ願えますでしょうか。

 

○武川政府参考人 お答えいたします。

 

 障害者の社会参加におきましては、就労が可能な場合におきましては、その就労機会の社会全体での確保、提供が重要であると考えております。このため、基本法におきましては、障害者の優先雇用、あるいは作業活動の場及び障害者の職業訓練のための施設の拡充等が規定されているところでございます。

 

 一方で、就労の場において障害者の活躍を支えていくためには、福祉施策と連携することも大変重要だと考えております。したがいまして、基本計画におきましても、人生における全段階を通じて適切な支援が受けられるよう、教育、福祉、医療、雇用等の各分野の有機的な連携のもと、施策を総合的に展開し、切れ目のない支援を行うことを盛り込んでおります。

 

○輿水委員 なかなかその有機的な連携が今うまくいっていない状況の中で、今後粘り強くその辺の取り組みを進めていただきたい、このように思っております。

 

 次に、障害者の情報コミュニケーションに関する取り組みについて伺います。

 

 自然災害が数多く発生する日本において、災害による被害を最小限に抑えることも重要でございます。そのために必要なのが情報やコミュニケーションでございます。

 

 権利条約の九条では、障害者が自立して生活し、及び生活のあらゆる場面に完全に参加することを可能とすることを目的とし、情報等を利用する機会を確保するための措置がうたわれております。災害時だけではなく、日常生活においても、適切な情報の入手と伝達は安全な生活を営む上で基本的な権利であると思います。

 

 そこで、障害者を含め全ての人々が正確な情報を適切に得られる社会を構築するために、情報や通信などの情報コミュニケーションに関する法的基盤の整備も含め、積極的な取り組みが必要と考えますが、見解をお聞かせください。

 

○武川政府参考人 障害者基本法第三条におきまして、「全て障害者は、可能な限り、言語その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保される」と規定されておりまして、さらに、同二十二条におきまして、情報の利用におけるバリアフリー化等について必要な施策を講ずることとされております。

 

 政府といたしましては、障害者基本計画におきまして、情報アクセシビリティーを分野別の重要施策として位置づけたところでございまして、これらの施策をしっかりと進めるとともに、このアクセシビリティーにおける課題につきまして、関係省庁と情報を共有しながら、その向上を図ってまいりたいと考えております。

 

○輿水委員 次に行かせていただきます。

 

 障害者、特に精神疾患や認知症の方の居住地を選択する権利の擁護について伺います。

 

 障害者権利条約の第十九条に、「障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わない」とあります。

 

 ここで、我が国における二〇一三年時点での精神疾患のある患者の全国の数は三百二十万人、うち三十二万人を超える方が入院していると聞いております。諸外国に比べ、この入院は桁違いに多い状況であることは皆さんも御存じのとおりだと思います。また、今後、日本における認知症の方は七百万人を超えるとも言われております。

 

 この精神疾患やまた認知症の方の行動・心理症状への対処として一時的に病院への入院も必要な場合があるかと思いますが、これらの方々の居住地を選択する権利の擁護についてどのように考えているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

 

○武川政府参考人 お答えいたします。

 

 精神疾患や認知症の方の居住地を選択する権利につきましては、基本法第三条において、「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。」と規定されております。政府といたしましても、障害者の地域社会との共生の実現が重要と考えております。

 

 したがいまして、その実現のために、精神医療提供体制の確立や相談機能の向上、多職種によるアウトリーチの充実、地域相談支援の提供体制の整備、人材育成や連携体制の構築等を基本計画に盛り込みまして、居住の選択の支援をしっかりと図ることといたしております。

 

○輿水委員 ありがとうございます。

 

 今、一通り質問をさせていただきました。

 

 障害者権利条約、これは、前文二十五項目と本則五十条から成る、二十一世紀に入っての初めての重厚な人権条約であると思います。全ての国民が人権及び基本的自由を差別なしに完全に共有する社会に向けて、新しい羅針盤とも言えるものであると思います。

 

 この障害者権利条約五条三項に、「締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するための全ての適当な措置をとる。」と明記されているところでございます。いよいよ、差別の撤廃や合理的配慮という明確な指針を受け、障害のある人とない人が対等に活動できる社会を目指し、さまざまな場面で取り組みが進むものと期待をしているところでございます。

 

 障害者権利条約を批准し、国連に対しての条約履行に関する報告に向けても、障害者基本法の障害者基本計画の推進、あるいは障害者差別解消法の制定を受けての社会における合理的配慮のガイドラインの策定などが着々と進められていると思います。

 

 これらを受けて、全ての人々が安心して地域で暮らし続けられる社会、また、障害者や高齢者がその能力を最大に発揮できる社会、そして全ての人々が正確な情報を的確に受け取れる社会の実現など、全ての国民が人権及びそういった自由、また一つ一つの権利を享受できる、そういった社会の構築、いわゆる共生社会の構築に向けて、最後に有村大臣のお考え並びに決意を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○有村国務大臣 輿水委員にお答えいたします。

 

 まずもって、大きな使命感、情熱を持って御質問いただいていますこと、また、従来から取り組んでいただいていることに感謝を申し上げます。

 

 障害者施策は、御指摘のとおり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性や能力を尊重し支え合う、まさに共生社会の実現を目指して、幅広く国民の理解を得ながら推進していくことが重要だと私自身も痛感をしております。

 

 輿水委員御紹介いただきましたように、障害者権利条約の趣旨、理念を踏まえて、障害者基本法、また、二十五年九月には第三次障害者基本計画に基づき、障害者の皆さんの自立と社会参画を推進するための充実に取り組んでまいりました。

 

 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、いわゆる障害者差別解消法の施行に向けて、先月、二月二十四日に、同法に基づく基本方針を閣議決定いたしたところでございます。来年四月の施行に向けて着実に準備をして、障害者に対する不当な差別的取り扱いの禁止及び合理的配慮の提供を通じて障害者の自立、社会参画を促していきたいと考えております。

 

 おっしゃるように、合理的配慮ということですが、合理的配慮という言葉だけを聞いても、皆さん、何それという感じですので、例えば、合理的配慮には、筆談とかこういうことが皆さんできるんですよという、その具体例をより多くの方々にわかってもらって、気持ちはあるけれどもなかなか行動に移せないという方々が少なくなって、実際にその気持ちを行動で共生社会に貢献していただけるような、そういう事例も多く御紹介しながら、内閣府特命担当大臣として、総合調整の役割を十分に果たして、障害者施策が政府全体で着実に図られるよう全力を尽くしたいと考えております。

 

○輿水委員 ありがとうございました。

 

 以上で終わります。