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第183回国会 厚生労働委員会 第12号


政府参考人出頭要求に関する件

公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)


○松本委員長 次に、輿水恵一君。

 

○輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 

 時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 

 厚生年金基金は、厚生年金の一部を国にかわって支給するいわゆる代行部分とともに、企業の実情に合わせて上乗せをするプラスアルファ部分から成り、この代行部分の給付に必要な保険料を国に納めることを免除され、その分をプラスアルファ部分とあわせて基金の掛金として運用し、従業員に、より手厚い老後所得を保障しよう、そういったものでございました。

 

 基金の制度の発足以降、資金運用に代行部分を生かしたスケールメリットの恩恵により順調な運営がなされてきた時期もあったと思いますが、昨今の経済、金融の情勢の悪化、資金運用での損失も含め、予定利率を上回る収益を確保することができずに、代行部分の支給に必要な積立金も消失してしまった、いわゆる代行割れ基金が全体の五割を占めている、このような状況になっていると思います。

 

 この法案では、既に代行割れが生じている基金の解散、また、代行割れはしていないものの積み立て状況が一定の基準に達していない基金、いわゆる代行割れ予備軍である基金を他の企業年金へ移行させます、もしくは解散させるとしております。

 

 その一方で、それ以外の健全な基金については、存続が可能なものとなっているところでございますが、我が党の古屋議員の本会議における、「健全な基金であっても、将来的な代行割れリスクは常につきまとうもの」とした上で、存続を可能とした理由についての質問に対して、田村大臣より、十分な積立金を持って適切に運用している基金まで強制的に廃止することは、問題が大きいものと考えているとの答弁がございました。

 

 しかし、経済のこの状況、まだまだ厳しい状況が予想される、また、将来何が起こるかわからない、このような中で、代行割れリスク、どこにもつきまとうものだと思いますが、この存続という選択肢を残したものについて、どういった形でのリスクが回避できるのか、また存続が可能と考えているのか、その辺の考え方についてもう一度お聞かせ願えますでしょうか。

 

○桝屋副大臣 お答えを申し上げます。

 

 今委員からいろいろお話もございまして、先ほどから議論が行われておりますが、厚生年金基金、これは国がつくった制度でございます。十分な積立金を持って適切に運用してきている基金まで強制的に廃止することは、それはそれで大きな問題があるというふうに本会議でも大臣が答弁をしたところでございます。

 

 このため、これらの基金については、自主的な移行を促しつつ、存続という選択肢を残した、こういうことでございます。

 

 ただし、先ほどから議論がありますように、存続の基準としては、代行資産の保全という観点から、市場の短期変動による代行資産の毀損リスクを回避できること、それから、上乗せ部分の積み立て不足による代行資産の毀損リスクを回避できること、この二つが極めて重要だと考えております。

 

 ということで、具体的には、代行資産の一・五倍以上の資産を保有していること、それから、代行部分のみならず、上乗せ部分を含めて積み立て不足が生じていないこと、これを条件といたしまして、いずれかの条件を満たしているということで存続を認める、こういうことにしたものでございます。

 

○輿水委員 ありがとうございます。

 

 今の基準を満たしているということは、ある程度適切な運用がなされていて、また、その利率も適正に設定をされている、だからこそ、基金もしっかりと積み上がっている。そういったことからすると、昨今のこの経済が厳しい中で、それを乗り越えてきちっとした運営がなされているものは、今後もその存続が可能である、そのような視点で認めているというふうに考えていいのか、お答え願えますでしょうか。

 

○桝屋副大臣 先ほど申し上げましたように、まさに先ほどの存続条件、それは今委員が御指摘になったとおりの条件だと考えているところでございます。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 そこで、実は、私たち、多くの国民の皆様は、今回の厚生年金基金解散という形で、非常に不安を抱いている。これは一般の年金についても同じような視点を抱かれている場合があると思いますので、ここで確認をさせていただきたいと思います。

 

 今政府が優先的にやるべきことは、経済の再建、また社会保障の再構築、その中で、この年金につきましては、高齢者だけではなく、子供から、働き盛りの全ての国民にとって重要な課題であると思います。

 

 そこで、これを掛けておかなかったために将来非常に大変な思いをする、そのような状況の中で、しっかりとこの年金が、百年安心、そして、これをしっかり維持していく、そういったことを明確にしておくことも大事だと思っております。

 

 公明党の前の坂口厚生労働大臣の時代に、この年金を安定させようということで、給付の水準をある一定まで下げて、また、負担もある一定まで上げさせていただきながら、約百五十兆と呼ばれるその積立金を取り崩しながらも、しっかり安定をさせていこう、マクロ経済スライドも含め、さらに、国庫負担も三分の一から二分の一に上げる、あらゆる手を使って安定させていこうと。

 

 そのような状況の中で、当初の計算によると、当然、団塊の世代の皆様が高齢者になって、年金給付の段階では非常にバランスが悪いということで、先ほどの積立金を取り崩すということで何とかそれを回避して、その後も、二一〇〇年時点で約二十五兆円が残る、そんな試算で進められているというふうに考えております。

 

 そして、そこでやはり気になるのが、先ほどの年金の積立金の運用等であると思います。この運用、先ほどの厚生年金基金の、解散しないで済む、ある程度積み上げられている、そういったものと同じように、こちらの方の積立金も、しっかりとした運用の中で、その辺が担保されているのか、また、この制度によって、将来、私たちが、国民が安心して年金が受けられる、そういった方向で今動いているのかどうなのか、この点について確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 

 公的年金の積立金でございますが、この管理運用につきましては、厚生年金保険法等で、専ら被保険者のためにということと、長期的な観点から安全かつ効率的に運用するということになっておりまして、現在、こうした考え方のもとで、運用に特化をしております専門の法人として、年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFというものを置きまして、ここで、専門的な知見に基づきまして、安全かつ効率的な運用をするということで、基本的なポートフォリオを定めて、運用してございます。

 

 厚生年金の運用のポートフォリオと基金とを比べますと、やはり厚生年金の方が、債券等、安全、確実な資産を多く持って運用するという形になってございます。

 

 なお、基本的なポートフォリオは、五年に一度、財政検証しますときに運用目標を設定しますので、そのときに見直しをするわけでございますが、急激な市場変動等がありまして、ポートフォリオの見直しが必要な場合には、適時適切な見直しを行うということになってございます。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。

 

 そして、今、税と社会保障の一体改革でいろいろ年金の方も検討されているのかと思いますけれども、まさに年金の安定性、安心感、そういったものをしっかりと国民に伝えていくこと、これは本当に政府にとって大事なことであると思います。

 

 それを政党間の政争の具にするのではなく、決めたことについてはみんなでそれを守っていく、またその制度を強靱化していく、そういった取り組みが非常に必要かと思うんですけれども、そういった考えについて大臣の見解をお聞かせ願えますでしょうか。

 

○田村国務大臣 今委員おっしゃられましたとおり、昨年、三党でいろいろな議論をさせていただく中で、現行の制度をまずもとに、幾つか改正法律案を出させていただいた。まあ、出させていただいたというよりかは、時の政権がお出しになられて、我々は三党で議論をさせていただいて、成立をさせていただいたわけであります。

 

 一つは、先ほど来おっしゃっておられます基礎年金の二分の一部分、この国庫負担をしっかりと安定的なものにしよう、恒久化していこうという部分。それから、特例水準というもの、今までデフレ下に、本来年金の支給額を引き下げなきゃならなかったんですが、それをしてこなかった部分がたまりがございまして、これを三年かけて二・五%、年金の給付額を適正化しよう、こういうような法律も成立をいたしました。さらには、非正規の方々の年金がなかなか安定しないということで、これを厚生年金に適用拡大をしていこう、これも法律を成立させていただいた。

 

 まさにいろいろなことをやったんですね。低所得者をどうするんだということで、低所得者、低年金者の方々に対する福祉的給付、こういうものも実はこの中に盛り込ませていただいた。さらには、共済年金との一元化、こういう部分もございました。

 

 こういうようないろいろな課題を、一応、一定の解決を見るために法律改正をしてきておるわけでございまして、そのような意味からしますと、現行制度でも長期的に、安定的に年金は運営できるであろうというような一つの共通認識は持たせていただいたんだというふうに思います。

 

 ただ、何が起こるかわかりませんから、そういう意味からいたしますと、出生率でありますとか積立金の運用利回り、こういうことを勘案して、五年に一度、財政を検証して、その中でもう一度いろいろな見直しをしようということでございます。そのような意味からいたしますと、まさに、私は当時政務官を務めさせていただいておりましたけれども、坂口大臣のもとで非常に安定的な年金制度をつくり上げたということは確かでございます。

 

 それをもとに、現在、三党の中において、この年金問題もどうしていくかという共通の合意を見出そうということで御議論をいただいておるわけでございまして、我々厚生労働省といたしましても、三党協議の中身を注視させていただいておるというような次第でございます。

 

○輿水委員 ありがとうございます。

 

 まさに私たちの将来の生活の基盤となる年金でございます。これをともどもにしっかりと安定させていく、そんな取り組みを全力で進めていきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 

 そこで、社会保障全体という点と年金をちょっと絡めて、最後、一つ見解を伺いたいんです。

 

 今、やはり高齢化されている中で、高齢者のそういった労働力というのは非常に大事になっております。しかし、高齢者の方も、年金受給者の方はある一定以上の収入を得ると年金が減らされるということで、もう俺はこれ以上働かないとか、能力があって元気だけれども働かないみたいな、そんな機運があるんです。

 

 やはりこれは、高齢者の方もしっかり、元気である限り稼いでいただいて、そして税金をしっかり納めていただいて国を支えていただく。ただ、年金は年金でしっかりとお支払いする、だから安心してとことん働いて、そして、ぜひ税金を納めてください。そういった世の中にしていくことも、これからの構造が変わる中で大事な視点なのかなと思うんですけれども、最後、見解を聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○桝屋副大臣 極めて大事な御指摘をいただきました。

 

 年金のみならず、社会保障全体の議論だと理解をいたします。これから、少子高齢化それから労働力人口の減少、これが進むわけでありますから、社会保障全体の持続可能性ということをどう求めていくかということが極めて大事だろうと思っております。

 

 そういう意味では、今委員から指摘がありましたように、高齢者の活力を生かす、社会保障の支え手として頑張っていただく、こういうことが非常に大事だろうと。委員からもお話ございましたように、高齢者は、全体で見ますと、やはりお元気な方が多いということでございまして、ある内閣府の調査では、七六%ぐらいの方がお元気であります。

 

 したがって、そうした状況をよくよく勘案して、支援を必要とする高齢者の方々には適切なサービスを提供するということは言うまでもありませんが、元気な高齢者には生きがいを持って働いていただいて、社会保障の支え手となっていただけるような、こんな社会を目指していきたい。年金制度についても、委員からお話がございました在職老齢年金、そういう制度に組み立てているわけでありますから。

 

 それから、働くということを委員からお話がございましたが、本年四月、高齢者の継続雇用を推進する制度改正を実施したわけであります。円滑な施行と定着に努めていきたいと思っておりますが、高齢者の多様な就業機会の確保等にしっかりと努めてまいりたい。意欲と能力に応じて働くことができる、いわゆる生涯現役社会、この実現に向けてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

 

○輿水委員 ありがとうございました。

 

 私も、きのう訪問させていただいた介護の施設では、六十八歳の入居者さんを七十五歳のおじいちゃんがしっかりと支えて働いて、元気にやっていた。現場ではそうやって、支えられる方、支える方が、年齢ではなくて、健康体年齢というか、そういった状況で動いているかな、そんなことを感じております。

 

 これから、新しい日本の活力づくりのためにも、高齢者の皆様がまた元気に働ける、そんな社会の構築に向けても御尽力をいただければと思います。

 

 以上で、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。