· 

第210回国会 環境委員会 第4号


○古賀委員長 次に、輿水恵一君。

 

○輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 

 それでは、早速でございますが、質問に入らせていただきます。

 

 今、世界中で極端な気象現象が頻発する中で、地球の温暖化対策は待ったなしであると思います。

 

 このような中で、COP27、気候変動枠組み条約の締約国会議では、近年、気候変動に起因する豪雨や干ばつなどにより世界中で甚大な被害が頻発している中で、最大の焦点となったのが、損失と損害、ロス・アンド・ダメージと呼ばれる気候変動による深刻な影響への対応でした。

 

 一方で、COP15、生物多様性条約の締約国会議で注目されたのが、二〇三〇年までに陸上と海域の三〇%を保全するサーティー・バイ・サーティーと呼ばれる目標で、少なくとも地球上の三割は健全な状態で保全することを目指すものでありました。

 

 そして、COP27でもCOP15でも熱い議論が展開されたのが、損失と損害またサーティー・バイ・サーティーに対処するための発展途上国等への資金の供給であったと伺っております。

 

 ここで、気候変動対策や生物多様性の保全のためには、資金を含めた個別の課題に対する数値目標の設定と同時に、目指すべき将来像を共有しながら、その実現に向かって力を合わせていくことが大切だと思っております。

 

 そこで、本日は、環境省の描く、将来を見据えた理想像について確認をさせていただきたいと思います。

 

 初めに、環境基本計画について伺います。

 

 環境省では、持続可能な社会の実現に向けて、環境、経済、社会の全体を俯瞰する計画として環境基本計画を一九九四年に策定し、その後、約六年置きに改定しており、現在では、第五次環境基本計画に基づき環境政策を進めていると伺っております。私は、環境政策の羅針盤として、目指すべき社会像を示す環境基本計画の役割は極めて重要であると考えます。

 

 そこで、まず、これまでの環境基本計画においてどのように目指すべき社会像を提示してきたのか、また、第五次環境基本計画では具体的に何を進めてきたのかについてお聞かせ願えますでしょうか。

 

○上田政府参考人 お答えいたします。

 

 環境基本法制定後、最初の基本計画である一九九四年の第一次環境基本計画では、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動や生活様式は問い直されるべきであるとした上で、循環、共生、参加及び国際的取組を長期的目標と位置づけたところでございます。

 

 次いで、ミレニアム開発目標などが国連等で議論されていた二〇〇〇年の第二次環境基本計画では、環境の側面はもとより、経済、社会的な側面においても可能な限り高い質の生活を保障する世界を提示し、さらに、次の二〇〇六年、第三次環境基本計画では、環境、経済、社会の統合的向上を提唱するとともに、国民一人一人が幸せを実感できる生活を享受でき、将来世代にも継承することができる社会、これを提示したところでございます。

 

 国連持続可能な開発会議、いわゆるリオ・プラス20が開催された二〇一二年の第四次環境基本計画では、低炭素、循環、自然共生の各分野が統合的に達成され、健全で恵み豊かな環境が地球環境から身近な地域にわたって保全される社会を提示したところでございます。

 

 そして、二〇一八年に策定した現在の第五次環境基本計画では、持続可能な循環共生型の社会、いわゆる環境、生命文明社会を提唱し、環境、経済、社会の統合的向上を具現化した地域循環共生圏を打ち出すとともに、環境政策を契機とした経済、社会的課題の同時解決という方向性を示したところでございます。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 国際共同研究団体、グローバルカーボンプロジェクトの報告によりますと、産業革命前からの気温上昇を一・五度に抑えるためには残り三千八百億トンしかCO2を排出できないとされており、世界の排出量が今のまま続けば、あと九年で、五〇%の確率で一・五度を超えると言われております。残された時間は限られています。

 

 私は、COP27のテーマである脱炭素、そしてCOP15のテーマである生物多様性保全を限られた時間で実現し、その後も継続していくためには、循環経済、いわゆるサーキュラーエコノミーを確立していくことが必要であると考えます。

 

 そこで、循環経済への移行に向けて、いつまでに何をしていくのかなど、ロードマップを策定し、施策を着実に実行していくことが重要であると考えますが、循環経済、サーキュラーエコノミーの実現に向けた我が国の取組について、小林副大臣に伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○小林副大臣 お答えいたします。

 

 循環経済の取組は、製造業など動脈産業と、廃棄物処理、リサイクル業など静脈産業、これらが一体となった資源循環を実施することに加え、製品等のライフサイクル全体における温室効果ガスの低減に貢献をするほか、資源採取等による生物多様性の損失を低減するという観点からも重要であります。

 

 このため、環境省としては、循環経済への移行を加速するために、二〇五〇年カーボンニュートラルを見据えて目指すべき循環経済の方向性や、素材や製品など分野ごとの二〇三〇年に向けた施策の方向性を、循環経済工程表として本年九月に公表いたしました。

 

 この循環経済工程表を踏まえ、官民一体となって引き続き循環経済への移行に取り組んでいく、このように考えております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 現在、国際的に大きな問題となっている海洋プラスチックごみ問題、これも循環経済が実現していないために顕在化している問題であるとも思います。海洋プラスチックごみ問題をこのまま放置してしまうと、二〇五〇年には、海の中で、約十億トンと言われておりますけれども、魚よりもごみの量の方が多くなると言われております。

 

 ここで、海洋プラスチックごみの七、八割が町から水路や河川を通って海へ流出するものであり、国や企業だけではなく、一人一人の意識改革や行動変容が必要になります。そして、この問題は、我が国だけではなく、国際的に協力、協調しながら取組を進めていくことが重要であり、今後の国際条約化が期待をされるところでございます。

 

 そこで、海洋プラスチックごみ問題について、国際条約化に向けた交渉の状況と、我が国が条約に求める内容についてお聞かせください。

 

○小林副大臣 お答えいたします。

 

 海洋プラスチック問題については、先月、ウルグアイで条約策定に向けた政府間交渉委員会の第一回会合が開催をされ、交渉が正式に開始をいたしました。

 

 環境省からは、小野地球環境審議官が、アジア太平洋地域から選ばれた理事候補として地域会合を主催をし、域内各国の巻き込みと議論の促進に貢献いたしております。

 

 次に、条約に求める内容でありますが、まず、我が国は、プラスチックの大量消費国、排出国を含む多くの国が参画をする実効的な枠組みを目指しております。そして、第一回会合においては、世界共通目標の設定や、プラスチックの製造から廃棄、リサイクルに至るライフサイクル全体での取組の重要性等を強調し、議論を主導いたしております。

 

 来年は、二〇二三年五月にフランスで開催ということでありますが、二〇二四年末までの交渉完了を目指して、引き続き積極的に議論に貢献してまいりたい、このように考えております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。ただいまのとおり、積極的に議論を進めていただければと思います。

 

 続いて、二〇二一年末の時点での我が国の太陽光発電の累積導入量は約七千八百万キロワットに達しており、中国、アメリカに次ぐ世界第三位の太陽光発電の累積導入量になっていると聞いているわけでございますが、まさに、脱炭素の実現に向けて、メガソーラーも含めた太陽光発電の拡大は重要であると考えます。

 

 ここで、太陽光発電について、自然と共生し、将来にわたって持続的に活用していくためには、太陽光パネルについても循環経済の仕組みを整備していく必要があると考えます。

 

 そこで、太陽光パネルの再生利用に当たっての課題と今後の取組方針についてお聞かせ願えますでしょうか。

 

○土居政府参考人 太陽光パネルは、二〇三〇年代後半に排出量のピークを迎えると想定しておりまして、計画的な対応のための体制整備、これが非常に重要だと考えております。その際、資源循環の観点からリユース、リサイクルを促進するということが重要だと認識しております。

 

 将来の大量廃棄に向けまして、使用済太陽光パネルの安全な引渡しやリサイクルを促進、円滑化するための支援、これが必要だということが、本年十月の、関係省庁で開催いたしました有識者検討会の場でも提言がなされております。

 

 環境省といたしましては、これまでも太陽光パネルの高効率なリサイクル設備への補助などを行ってまいりましたが、この提言も踏まえまして、関係省庁と連携をし、事業の廃止から安全な取り外し、廃棄パネルの物の流れをまず実態把握をきちんとした上で、さらに、再生資源の用途の拡大も含めまして、円滑なリサイクル、適正処理に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。まさに太陽光パネルにおきましても、リユース、リサイクルのそういった仕組みをしっかりと築き上げていただければと思います。

 

 最後になりますが、環境省が第五次環境基本計画で掲げました循環共生型社会、いわゆる環境、生命文明社会の実現に向けて、西村大臣に伺いたいと思います。

 

 日本は、二〇三〇年度に二〇一三年度と比較して温室効果ガスを四六%削減することと、二〇五〇年のカーボンニュートラルを目指して取組を進めているところだと思います。

 

 このような中で、先日、ローマ・クラブというところの九月に発表したリポートの中に、万人のための地球、そういったリポートなんですけれども、ここには、今後予測されるシナリオとして、象徴的な二つのそういったシナリオが示されました。

 

 一つ目は、国際社会が気候変動対策や持続可能性について議論はするものの抜本的な対策を講じなかった場合のシナリオで、いわゆる小出し、手遅れ、トゥーリトル・トゥーレート、そういう一つのシナリオ。もう一つは、社会が危機を認識し、劇的な方向転換を即座に進めることにより地球を犠牲にしない経済を実現できるという、大きな飛躍、ジャイアントリープ、その二つでございます。

 

 そういった状況の中で、明年のG7サミットに向けて第六次環境計画の検討も今進めているわけですが、これらの検討も踏まえて、また、第五次環境基本計画で示したまさに環境、生命文明社会の実現、そういった理想をより具体的に提示し、先進諸国が一致団結をして環境保全への様々な対策を意欲的に進める流れをつくることも大切ではないか、まさにジャイアントリープを生み出していくことが必要ではないか、このように思いますが、西村大臣の意気込みをお聞かせ願えますでしょうか。

 

○西村(明)国務大臣 今委員の御指摘のとおりだというふうに思っております。

 

 第六次の環境基本計画は、第一次の環境基本計画から三十年の節目で策定され、かつ、岸田総理が昨年のCOP26で述べられた勝負の十年、この方向性を示す重要な計画となります。

 

 現行の第五次環境基本計画で示された持続可能な循環共生型の社会、いわゆる委員御指摘の環境、生命文明社会、この考え方も踏まえて、来年日本で開催されますG7などの議論も考慮しつつ、国民お一人お一人が希望を持てる持続可能な経済社会の実現に向けて、まさに大きなビジョンを発信してまいりたいというふうに考えております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。

 

 西村環境大臣のリーダーシップの下で、地球を犠牲にしない循環経済、いわゆるサーキュラーエコノミーの実現へ大きな飛躍を期待をし、質問を終わらせていただきます。

 

 本日は、大変にありがとうございました。