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第192回国会  本会議 第5号

○副議長(川端達夫君) 輿水恵一君。

 

    〔輿水恵一君登壇〕

 

○輿水恵一君 公明党の輿水恵一でございます。

 

 私は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して質問をさせていただきます。(拍手)

 

 私たちは、日本が世界に誇る社会保障の充実、安定化と財政健全化の同時達成を目指し、社会保障と税の一体改革を進めてまいりました。しかし、今回、世界経済が直面するリスクを関係諸国が一体となって回避するために、医療や介護などを支える消費税率の一〇%への引き上げが平成三十一年十月まで再延期されることとなりました。

 

 一方で、二〇一二年には約一千五百万人だった七十五歳以上の高齢者数は、二〇一五年には約一千七百万人、そして二〇二五年には約二千二百万人と推計されており、このように急激に進行する高齢化への対策は確実に進めなければなりません。さらに、日本は、本格的な人口減少の時代に突入し、二〇一五年の人口減少幅が約二十七万人と過去最大となりました。

 

 このような状況の中で、政府は、我が国の構造的な問題である少子高齢化に真正面から挑み、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障の実現を目的とするニッポン一億総活躍プランを打ち出しました。この中には、新たに約五十万人分以上の介護の受け皿を整備することなども盛り込まれております。

 

 まさに、高齢化対策も少子化対策も待ったなしであります。そして、これら社会保障分野についての多くは地方公共団体からサービスが提供されており、地方財政計画に基づく適切な執行のためには安定的な財源の確保が必要であります。

 

 そこで、今回の消費税率の引き上げの延期による地方財政への影響はどの程度になると見込まれるのか、地方税収に加え、地方交付税の原資分への影響も含めて、お示しください。また、国民生活に直結した実務を担っている地方公共団体の財政運営に支障を来すことがないように、この影響にどのように対処しようとしているのか、総務大臣のお考えをお聞かせください。

 

 車体課税について伺います。

 

 平成二十九年の四月より自動車取得税を廃止するとともに、自動車税及び軽自動車税に環境性能割を導入する等の車体課税の見直しを進めることとなっておりました。この見直しは、環境性能の高い自動車への買いかえを促進し、日本経済の押し上げを図るとともに、自動車の環境負荷の低減が期待されます。

 

 一方、税制抜本改革法において、「国及び地方を通じた関連税制の在り方の見直しを行い、安定的な財源を確保した上で、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負担の軽減及びグリーン化の観点から、見直しを行う。」とされています。

 

 そこで、今回の車体課税の見直しについて、消費税率の延期に合わせて、施行を二年半延期することとした理由についてお聞かせください。また、今回予定されていた環境性能割の税率区分に関する今後の取り扱いについての考えもあわせてお聞かせください。

 

 社会保障制度を初め、福祉、学校教育、消防、道路や河川等の社会基盤の整備など、国民生活に密接に関連する行政は、その多くが地方公共団体の手で実施されております。これらを安定的な財源のもとで実施することを考えると、平成三十一年十月の消費税一〇%への引き上げは、確実に実行されなければなりません。

 

 そのためには、GDPや雇用の約七割を占める地域経済圏の活性化による日本経済の底上げが必要であります。ここで、地域資源や地域の特色に着目した、農林水産業の六次産業化や魅力ある観光産業の開発など、産学金官の連携による地域経済の創造や、地方への移住促進や小さな拠点、生涯活躍のまちづくりなど、将来にわたって活気ある地域づくりを着実に推進することが求められております。

 

 そこで、消費税一〇%への引き上げを平成三十一年十月に確実に実現するために、地方を所管する総務省が先頭に立って、ローカル・アベノミクスを推進し、地域経済の好循環の確立を通じて我が国の経済を力強いものにしていく必要があると考えますが、総務大臣の地域経済の活性化へのお考えをお聞かせください。

 

 今回の消費税率の引き上げ延期による当面の課題は、平成二十九年度の地方財政収支への対処であると思います。特に、平成二十九年度地方財政収支の仮試算では、二十八年度まで見込んでいた前年度決算税収の増及び当該年度税収の補正増に伴う繰越金が見込まれないなど、大変に厳しい状況となっております。

 

 一方で、深刻な人口減少問題とともに、東京一極集中の加速により、地方は、若者離れ、高齢化が進み、大都市との格差が広がっています。今こそ、将来にわたって活力ある地域づくりを目指し、本格的な事業展開に取り組む段階に入ってきた地方創生の芽を開花させなければなりません。

 

 そこで、平成二十九年度の地財対策において、地域生活や地域経済の持続可能な発展を支えるための、必要な一般財源総額の確保に向けての総務大臣の御決意をお聞かせください。

 

 公明党は、地域の隅々まで希望が行き渡る国を目指して、全国三千名の地方議員と国会議員が一体となって、地域に根を張り、現場の声を大切に、一生懸命に働き抜いてまいりました。いよいよここからが勝負であります。活気ある温かな地域づくりを目指して、地方公共団体の安定的な福祉サービスの継続とともに、地域の新たなる繁栄と発展の道を全力で開いていくことをお誓いし、質問とさせていただきます。(拍手)

 

    〔国務大臣高市早苗君登壇〕

 

○国務大臣(高市早苗君) 輿水議員から私には、まず、引き上げ延期による地方税収等への影響と地方団体の財政運営についてお尋ねがございました。

 

 地方財源への影響は、地方消費税と地方交付税法定率分を合わせますと、平年度でおよそ一・七兆円の減収と見込んでいます。引き上げ延期により、予定していた地方消費税収等の歳入が得られなくなりますが、毎年度の地方財政対策において地方の一般財源総額をしっかり確保することで、地方団体が地域に必要な行政サービスを確実に提供しつつ安定的な財政運営を行うことができるよう、今後とも努めてまいります。

 

 次に、車体課税の見直しの延期及び環境性能割の導入時における税率区分の取り扱いについてお尋ねがありました。

 

 自動車取得税の廃止と環境性能割の導入は、与党税制改正大綱において、消費税率一〇%時の措置であることが明記されています。

 

 これを踏まえ、今回の法案においては、消費税率引き上げ時期の変更に合わせ、車体課税の見直し時期を二年半延期することとしています。

 

 また、環境性能割の税率区分は、さきの通常国会で成立した地方税法等改正法において、環境性能の向上を促進する重要性や地方の安定的な財源確保などの観点から、二年ごとの見直しが規定されています。

 

 今回の法案においては、環境性能割の導入を二年半延期することに伴い、この趣旨を踏まえ、導入前に税率区分を見直すこととしています。

 

 次に、ローカル・アベノミクスの推進についてお尋ねがありました。

 

 地域経済は全体として緩やかな回復基調が続いているものの、世界経済の需要の低迷や内需の腰折れが懸念されることから、ローカル・アベノミクスを加速し、地域経済の好循環のさらなる拡大を後押ししていくことが重要です。

 

 具体的には、第二次補正予算に新たに盛り込んだ、地方への人と情報の大きな流れを創出するチャレンジ・ふるさとワークや、マイキープラットフォームを活用した地域経済応援ポイントなどの施策を進めていきます。

 

 また、ローカル一万プロジェクトやふるさとテレワークなどの推進に引き続き力を入れるなど、あらゆる政策を動員して、ローカル・アベノミクスを強力に推進してまいります。

 

 最後に、地方の一般財源総額の確保についてお尋ねがありました。

 

 平成二十三年度地方財政対策以来、前年度決算税収の増及び当該年度税収の補正増に伴う交付税の増分を翌年度への繰越金として活用することにより、出口ベースの交付税総額の確保と臨時財政対策債の発行抑制を図ってまいりました。

 

 しかしながら、平成二十九年度においては、現時点でこのような繰越金が見込めず、地方団体に交付される出口ベースの地方交付税が〇・七兆円の減、臨時財政対策債が〇・九兆円の増という大変厳しい状況です。

 

 年末の地方財政対策に向けては、地方団体が一億総活躍社会の実現や地方創生の推進などに取り組むため、必要な地方の一般財源総額をしっかり確保するとともに、特に、地方交付税総額が適切に確保されるよう、最大限の努力を重ねてまいります。(拍手)