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第185回国会 内閣委員会 第5号


・国家戦略特別区域法案(内閣提出第一八号)


○柴山委員長 次に、輿水恵一君。

 

○輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 

 本日は、参考人の先生方、貴重なお話を聞かせていただきまして、まことにありがとうございます。また、質問の機会を与えていただいたことに心より感謝を申し上げます。

 

 初めに、きょう、参考人の先生方のお話をいただき、一つ反省しているところがございます。それは、今回の特区制度、やはりちょっと小粒なのかなと実は私も内心思っていました。国家戦略にしては余りにも、そういう思いがありましたが、八代先生の話も聞かせていただき、この規制改革を進めることがどれだけ今まで大変だったのか、ここまで具体的な項目を明記して、こうやって法案として今進もうとしていること、その御苦労と、また力がどれだけ要ったのかな、そういったことを改めて感じさせていただきました。

 

 規制というのは、確かに、先生方おっしゃられました、例えば雇用の問題、雇われている人の側に立って考える場合と、また、雇われていない、今から職場を求める人の側に立って考える、労働者全体に対するそういった規制改革の視点。さらに、規制に守られている人もいれば、規制が自分自身の活動を阻害している方もいる。そして、いろいろな社会や経済の環境が変わってきた中で、その規制が本当に現状に合っているかどうか、そういったものをよく見ながら、この日本がどういった国家として成長していくのか、今回の法案というのは、そういった面では大変に重要な法案であると私は改めて認識をさせていただきました。

 

 そこで、初めに八代先生にお伺いしたいんですけれども、個々の利益の追求から、規制改革というのは、どちらかというと全体観に立った、そういった視点の中で、地域全体、また国家全体の利益追求をする大きな重要なものなんだなというふうに感じたんですけれども、その辺の視点について、考え方を聞かせていただけますでしょうか。

 

○八代参考人 どうもありがとうございました。

 

 当然ながら、あらゆる規制改革は、国全体、経済全体の利益のためにやるわけでして、これは、規制というのが、どっちかといえば、特定の利害集団の利益を守る、それによって他の事業者あるいは消費者全体にコストをかけるというものと、いわば正反対なわけです。

 

 規制改革というのは、ある意味で自由貿易と同じことでありまして、自由貿易というのは、国と国との間の取引の自由化によって、例えばコストが下がって消費者が利益を得る。規制も同じことであって、国内の特定集団の利益のためにほかの人を犠牲にしているわけですから、それを改善するということは、当然ながら国全体の利益になるわけです。

 

 それをなぜ全国で一斉にやらずに特定の地域だけでやるかというと、先ほども議論がありましたように、やはり所管官庁が、一挙に改革したら何が起こるかわからないという不安感があるわけです。ですから、それに対して、特定の地域を限定してやってみる、実験をしてみることで、その成果を踏まえて全国に展開するという二段階方式なわけです。

 

 これは過去の総合特区や構造改革特区でも同じなんですが、今回の国家戦略特区の大きな点は、それを最も投資効果の大きい都市でまずやってみる。これは、何といっても、今の成長戦略のポイントが、民間投資をとにかく刺激する。それから、日本の場合、海外にどんどん直接投資が行っているわけですが、逆に海外からの日本への直接投資が非常に少なくて、その差が広がっている。これがまた日本の国内の雇用を失わせる大きな要因になっているわけで、できるだけ海外の人が日本に投資してくれるような環境をつくる。そのためには、グローバルなビジネス環境にできるだけ近いものを特区の中でつくる必要があって、そのときには、やはり大都市がまず一番ふさわしいのではないか。

 

 これはさっきも言いましたように、大都市の独占ではなくて、それは当然ながら、速やかに地方都市にも波及していくべきものだと思っております。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。

 

 まさに国内だけを見るんじゃなくて、世界的な中で、日本の今後の成長、また競争力というものをどう高めていくか、そういった意味で、まず特区の中で試しながら、そして全体的に広めて、国家を本当に強い国家にしていこう、そういった方向であるということはよくわかりました。

 

 その中で、原先生に今度はお伺いしたいんですけれども、規制改革の実験場として特区は突破口だ、まさに大事な、さらに、こういうものであれば、スピード感を持ってどしどし進めていく必要があると思います。

 

 その中で、一つ、今回、特区の指定というのは、一カ所とか二カ所とか、まだ具体的にはなっていないんですけれども、例えば、同じ特区を二カ所で同時に進めながら、競争原理を働かせていく。一カ所で特区を指定してしまうと、そこにあぐらをかいて、ここで、ほかが何をやるかわからないけれども、うちで思うようにやっていこう、そういうことではなくて、二カ所で、あっちよりもこっち、こっちよりもあっち、そんな競争原理を働かせながら進めていく。そして、それが全国レベルで展開するにもいい効果が出てくるのかな、そんなことをちょっと聞きながら感じたんですけれども、その辺についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

 

○原参考人 大変ありがとうございます。

 

 極めて重要な御指摘だと思います。特区の場所をどこにするのかということについては、これは新聞報道なんかで一時期、三大都市圏みたいな、ちょっと間違った報道がなされたこともございましたが、これはまだ全くこれからで、年末から年始に、この法案が成立したら、その後に特区諮問会議をつくって決めていくということだと理解しております。

 

 まさに今先生おっしゃられましたように、特区で選ばれて、そこにあぐらをかいてしまうということになってはいけないわけでございまして、いかにそこでよりよい制度改革を目指していくのか。これは運用面もそうですし、それから、さらにその次の課題を見出して取り組んでいくということも含めて、そこの競争の環境をつくっていくということは極めて重要だと思います。

 

 ありがとうございます。

 

○輿水委員 ありがとうございます。

 

 あともう一つ、興味深い御提案というか、雇用の問題なんかも今後あるのかなと。やはり国家戦略を考えたときに、日本は人口が減少していく、さらに少子高齢化の中で労働人口が減る中で、そういった雇用をどのような形で日本は確保しながら、また生産性を保っていくか。そういった視点での、新しい特区の、ただ、解雇特区とかそういうやり方じゃなくて、雇用を広げていく中で、積極的な検討も必要なのかなと思うんですけれども、その辺の見解について、一言お聞かせ願えますでしょうか。

 

○原参考人 ありがとうございます。

 

 先ほどもちょっと触れましたように、何か解雇特区という誤った呼び名をつけられてしまいましたが、これは、もともと私どもが検討しておりましたのは、むしろそうではなくて、雇用を拡大するための規制改革をやる、それを特区で実験してみたらどうかという提案をしておりました。

 

 今回、一定の前進をしておりますが、この雇用ルールについてはまだまだ課題が残っていると思っております。労働時間の問題なんかもそうでございますし、それからあと、先生ちょっと触れられたのはそういう御趣旨かなと思いましたが、外国人の労働者の問題、これも、今後人口が減少していく中で、いつまでも避けているわけにはいかない課題だということだと思います。これも、国家戦略特区の中で、一つの重要なテーマとして議論をしていくという必然性はあるんじゃないかと思っております。

 

○輿水委員 ありがとうございます。

 

 では、続きまして、山口参考人にお聞きいたします。

 

 先ほど、やはり権利を拡大する、また権利の侵害、地域にとっても、憲法の九十五条の中でそういった御指摘をいただいたと思うんですけれども、今回のシステムとして、統合推進本部というところで最終的には計画を決めて具体的に進める。その中で、そういったことがあるのかないのかをきちっと精査しながら進めることで、首長も入っているわけですから、この問題もある程度解決できるのかなと私は感じているんですけれども、その辺についての見解をお願いいたします。

 

○山口参考人 もちろん、地方公共団体の首長がその会議に参加するということは最低条件だと思います。

 

 ただ、私が危惧しておりますのは、先ほどちょっといささか不穏当な例を出したかもしれませんが、特定の志向性を持った人々が全部独占するような会議体で、ある種の方向性を、これは国益だという形で打ち出していくということがあるならば、やはりそれに対して、その適用を受ける地域からなかなか異論を出しにくいという問題も起こるのではないか。

 

 やはり、特区がもたらす具体的な効果については、それぞれの地域でしっかりと検証をし、要するに、インフォームド・コンセントというものをきちっとつくるという仕組みは不可欠ではないかということを申し上げたかったわけであります。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。

 

 最後に、八田先生に教えていただきたいんですけれども、やはり総合特区と今回の国家戦略特区、同じようなというふうな御指摘もよくいただくんですけれども、今、三本の矢が放たれて、成長戦略、やはり具体的にスピードが必要だと。

 

 そういった面で、国家戦略特区というのは、具体的な規制緩和の項目が決まっていて、そしてスタートをするという意味からも、そのスピード感また実効性が非常に高いのかなというふうに思うんですけれども、もう一度、その辺が総合特区とはどう違って、地域での具体的な展開がどうなされるのかについて、御説明いただけますでしょうか。

 

○八田参考人 総合特区というのは、先ほど申し上げましたように、地方活性化のためであります。そして、こちらの方は国全体の観点からというのが大枠ですが、実際の進め方はかなり違うところがありますね。

 

 総合特区の場合には、まず地域を選んでから、いろいろな規制改革の要望があるんですが、それを、地域活性化統合本部の事務局員が、各省から出向した方たちです、その方たちがいろいろな省に行って交渉するわけですね。交渉するけれども、そこで向こうがだめだよと言ったら、それっきりということなんですよ。それで議論していって、それを上に上げていって、上の政治判断を仰ぐというような仕組みが余りない。

 

 それから、交渉する当人が、我々のような人間は本当に失うものが何もないですから各省と議論しても議論できるんですが、出向してきたお役所の方は、ここで勝ったら、また江戸のかたきを長崎で討たれるかもしれないというのがあるから、どうしても緩みますよね。それが、今回の戦略特区ではそこの難しさを認識したものだから、前もって、その交渉は我々のように失うものがない人間がやっちゃいましょうということ、もちろん事務局がサポートしてくれるわけですが、事務局としても、最後は、我々が言うからしようがないということでできた。それでこういうものがとれたと思います。だから、仕組みの違いがあると思います。

 

 だから、それぞれに意義があるけれども、ある程度、これまでのことから学んだ面もあるというふうに言えると思います。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 本当に、まず、改革のメニューが用意されて、あとは、これからそれがどう展開されるかは、その規制改革をどう活用するか、今度は現場の問題になると思いますし、その突破口を開く今回の法案というのは大変に重要な意義があるというふうに私も感じました。

 

 さらに、今回、項目が挙げられているんですけれども、こういう制度をつくるということによって、新たな項目を追加していく、そういった可能性も十分あるわけですよね。その辺の新たな項目の追加についての柔軟性、どの程度の開かれた環境にこの制度はあるかについて、見解を教えていただけますでしょうか。

 

○柴山委員長 質疑時間が終了しておりますので、短目に御答弁ください。

 

○八田参考人 今回は、法的にまだ決められていないワーキンググループでやって、しかし、与党及び政府首脳の強大なバックアップ、サポートがあったから、各省がいろいろとやってくれたと思います。今度、新しい仕組みでは、制度としてそれが確立して、法的な組織でやっていかれるから、規制改革がより強力に進められるのではないか、そういうふうに思います。

 

○輿水委員 どうもありがとうございました。

 

 この法案が日本の新しい未来を開く、そういったものになるように期待をして、質問を終わらせていただきます。

 

 大変ありがとうございました。